第11章 看病七日目 愛を交わす(R18)
子が産まれた時は喜び可愛がっておきながら、成長してしまえば自分の出世の道具にする。
娘に愛する者がいたとしても、関係ないと一蹴する。
(俗世とはなんと穢れているのだろう)
謙信「父には俺から言っておく。お前は帰れ」
娘の顔が一層青ざめた。
娘「いえ!なりませぬ。父は必ず褥を共にするようにと。
もしそれができなかった場合は明日の朝、尼寺に連れていき髪を下ろさせると言っておりました。
私を助けると思って、どうか……っ」
謙信「あの男っ!!!」
(なんの咎もない娘の髪を無理やりおろさせるなど、人のする事ではない)
頭にかっと血が上り、見張りごと襖を蹴破ってやりたくなった。
踏みとどまったのはこの女の身を案じてだ。
謙信「すまぬ。そもそもの原因は俺だ。
俺の意志とは関係なく家臣達は躍起になって後継ぎを作ろうとしている」
伊勢と引き裂かれ、生涯不犯を誓った。
もう二度と過ちを犯さないように。
二度と誰も不幸にさせぬように。
そして家臣への当てつけでもあった。
泣き続ける娘の手を引き、娘が座っていた褥ではなく普段使用している褥の方へ向かった。
屏風を置いているので襖から見えないはず。
褥に座らせ行灯の火を消すと娘が身を強張らせた。
距離を縮め囁く。
謙信「しっ、安心しろ抱くつもりはない。せいぜい派手に演技しろ」
娘「演技……ですか?」
謙信「ああ。だがお前に多少触れる。恋仲の男とは枕を交わしたのか」
確認すると暗闇でも娘の頬が赤く染まったのが見えた。
娘「……はい、一度だけ」
謙信「それは良かった。恋仲の男より先にお前に触れるのは気が引けた。
これから身体に触れるが我慢しろ。切り抜ければ晴れてお前は愛しい者のもとへ行ける」
娘「はいっ、わかりました!」
メソメソしていた女が顔を輝かせた。