第10章 看病七日目 逃避と告白
「謙信様、それは言い過ぎで…んっ」
さっきまでとは違う、呼吸を奪うようなキスをされた。
歯の裏、口蓋(こうがい)まで舌で嬲られる。
口の奥で怯えていた舌を探られ、吸われ、舐めとられ、舌を引っ込めようとすると謙信様の舌が追いかけてきて、応じろとでもいうようにつつかれた。
恐る恐る舌を出すと先と先だけを合わされ、絡められる。
舌を舌で舐められ、ぞくぞくとした快感が背中を走る。
「んっ…」
謙信「はっ…」
唇の隙間から時折吐息がもれた。
謙信様がもらす色を含んだ吐息に酔いしれる。
謙信様の顔が角度を変える度に頬の内側や舌の裏、歯列の奥まで暴かれる。
(こんなキス…したことない)
思考がとろけて何も考えられない。
こんなこと今まで経験したことがなかった。
うっとりと目を開けると謙信様と目が合い、透き通った二色の瞳に惹き込まれた。
(好き…)
脳が蕩けて、その想いだけが溢れてどうしようもない。
(謙信様……本当に……嘘みたいだ)
もうこのままどうなってもいいと思えてしまうくらい幸福感に満たされる。
(もっと欲しい)
そんな欲に負けて謙信様の舌を押しのけて…舌を差し入れた。
クチュ
水音が響いて、謙信様の体がピクンと反応した。
謙信様の口内に差し入れた舌は、さっき謙信様がしてくれたように歯列をなぞっていく。
舌が短いせいなのか口蓋までは舐められず、前歯の裏を舐めることで諦めた。
謙信「………っ、はぁ、舞…可愛いな……」
反撃とばかりに謙信様の舌が口内で暴れる。
「え…、ぁっ、んんっ………」
熱っぽい、でもまだ余裕のある謙信様に胸がキュウと締め付けられる。
こっちは余裕なんてなくて、付いていくので精いっぱいだ。
鼻で息をしているはずなのに、なんだかクラクラと息苦しい。
チュッっというリップ音がして謙信様の唇が離れた。