第10章 看病七日目 逃避と告白
(嬉しい、嬉しいけどっ、でも…)
一抹の不安を覚える。
「け、謙信様がそこまで想ってくださって嬉しいです。
でも…本当に私で良いのですか?まだ付き合いも浅いですし、一緒になってみたらやっぱり違ったなんてことになるかもしれませんよ?
姫なんて肩書だけでお茶も歌もできませんし、色々と呆れちゃうんじゃないかと。
飛びぬけて何かできるわけでもなく…十人並みの顔ですし…」
自信が持てなくて尻すぼみになる。
謙信様はいつもの冷めた表情になり、事も無げに言い放つ。
謙信「お前が庶民で、時折非常識で、遠慮のない女だというのは、わかりきっていることだ」
容赦ない言葉にぐさっとくる。
(もっとオブラートに包んでよ、謙信様!)
本当のことだけに好きな人に言われると傷つく。
謙信「だがそんなものはどうでも良い。
お前が姫らしくしとやかになりたいというなら嫁いできてから学べば良い。
俺は今のお前を好きになったのだ。変わって欲しいなどとあまり思わぬが…
俺の隣で好きに生きれば良い」
『どうでもよい』と言い放たれて胸がすっと軽くなる。
謙信「時に図々しいくらいだというのに、些末なことを気にするのだな。
後悔などしない。何かあったならお互い歩み寄れば良いだけだ」
「だって…」
ムムと口を尖らせると、あやすように謙信様の唇が触れてくる。
謙信「十人並みなどと申すな。誰よりも愛らしく、強く、きれいだ。
舞以外を俺は愛さぬ。この世でお前が一番きれいだ」