第10章 看病七日目 逃避と告白
びっくりして目を開けてしまい、そのまま口づけを受ける。
綺麗な顔がすぐ目の前にあって、視界いっぱいだ。
謙信様も目を開けたままで、目が合うとふっと目元を緩めた。
唇が離れるとき、名残惜しくて追いかけたくなった。
謙信「愛している。これほどに愛しいと思える女が現れるとはな……」
そう言うと角度を変えて顔を寄せてくる。
「ん……!」
二度目のキスはさっきよりも長かった。
軽く合わさった唇の感触に、全身がかっと燃えるように熱くなった。
信じられない、嬉しい、柔らかい、熱い。
様々な想いが頭のなかでぐちゃぐちゃに混ざり、喉の奥がつまって言葉がでない。
耳の奥にドクンドクンドクンという鼓動がうるさいくらいに響く中、私の思考は『謙信様が好き』それだけしか考えられなくなった。
謙信「舞」
呼ばれて目を開けてみれば、謙信様と目が合った。
濁りのない透き通った二色の瞳に、思考も何も全部吸い込まれそうだ。
謙信「お前を……抱きたい」
(……えっ!?)
言われたことを理解した途端、湯気が立ちそうなくらい顔が熱くなった。
「あ…、え…」
そういうことをするのは初めてじゃない。
でも…上手く返答できない。
やっと思いが届いてキスをして、それだけで息があがっている自分に、これ以上の事ができるだろうか。
呼吸困難に陥るんじゃないかと本気で心配だ。
(謙信様と…なんて、考えただけで恥ずかしい)
謙信「俺は明日越後に帰る。
その前に心だけでなく体も俺のものにしたい」
熱い吐息とともに、ゆらゆらと熱をもった瞳で求められる。
(そうか、そういえば明日帰ってしまうんだった)
思い出して唐突に寂しくなった。
(せっかく両想いになれたのに…)
なんだか泣きたくなってくる。