第10章 看病七日目 逃避と告白
「いつからだろうって何度も考えました。
でも、きっと最初からです。
最初と言っても城下で会った時ですが…貴方の刀が髪に触れたあの瞬間に、心は捕らわれたんだと思います」
頬を優しくなでてくれていた指が熱くなった。
「最初は少し怖かったです。
でも時折謙信様が見せてくれる優しさとか、律義なところ、お酒を飲んで笑っているお顔、刀に誓いを立ててくれた時……どれほど私が惹かれたか、謙信様はおわかりにならないでしょう?」
謙信「舞…」
謙信様はうっすらと目元を染めた。
「お城を抜け出した夜、何度も私を助けてくださいました。
謙信様が囁く度、触れる度、今のように心臓がたくさん跳ねました。
安土の姫かと問い詰められた時、もう謙信様は今まで通り接してくれないだろうと、胸がつぶれそうになりました」
思い出して顔をしかめると謙信様が案ずるように頭を撫でた。
「どうせ叶わない恋だと諦めていました。
でも毎日謙信様に顔を合わせるようになって、何気ない動作ひとつ、言葉ひとつにどうしようもなく動揺して、切なくて苦しくて…それでも諦めようと心に蓋をしていました。
国へ帰ったところで謙信様を忘れる自信なんか全然ないくせに…」
ぽろっと涙がこぼれた。
「謙信様が好きです。大好きなんです!
この世で誰よりも、大好きです」
謙信「舞…」
愛おしそうに見つめてくる謙信様の気持ちを素直に受け取れば、甘い充足感に満たされる。
謙信「俺も悩んだが、舞は俺以上に相当苦しんだのだな。
察してやれなくてすまなかった…」
手ぬぐいで涙を拭かれ、そっと瞼を閉じた。
謙信「そのまま目を閉じていろ」
謙信様が大きく動き身体が持ち上がった。
(お、お姫様抱っこだ!初めて!)
感激しているうちに背中に柔らかい布団があたった。
間髪おかず唇に柔らかい感触。