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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第1章 触れた髪


謙信「そのような戯言、言われたのは初めてだ。
 お前には俺がただの一人の人間に映っているのか」

「はい。謙信様が色々と言われているのは知っていますけど、お城を出て、刀を置いて、こうしていると一人の男の人でしょう?」


『そう思うと、ちょっと心が軽くなりませんか?』そういって笑って見せた。


謙信様や信長様クラスの武将になると、自分が自分である事になんの負担も感じていないかもしれない。

私が言っていることは、ただの独りよがりなのかもしれないけど、そういう考え方もあるんだと感じてくれれば良い。


謙信「頭を切って中身を覗いたら、どうなってるのだろうな」


謙信様が物騒な事を言いながら怪しげな笑みを浮かべる。


「いえ。えーと、すみませんでした?」


怒らせたかなと思ったけれど、そうではなさそうだ。
でもやっぱり怖いので謝ってみる。


謙信「ふっ、興味深い女だな。
 俺の常識から1歩、2歩…いや10歩ほど飛んでいる」

「ひ、非常識人間みたいに言わないでください!
 もう!謙信様なんて、もう知りません!」


ふんっ、とそっぽを向くと、不意に指が伸びてきて顎を捕らえられた。


(え?)


まるで『こっちを向け』と言っているように、謙信様の指が私を誘う。
顔を向けると、謙信様の整った顔がすぐ目の前にあった。


(……う!わっ!ひゃーーーーー!)


その気になれば女性なら誰でも虜にしてしまうだろう顔立ちが、触れそうなくらい近くにあった。


「け、けけけけけ謙信様!ち、近い!近すぎます!」


頬が一気に熱を持ち、慌ててのけ反るけど謙信様の指がそれを許してくれなかった。

思いがけず至近距離で見つめ合うことになってしまった。


(あ、まつ毛も髪色と同じ色なんだ。唇の形も素敵)


どさくさに紛れて観察は怠らないあたり、まだ余裕があるのかもしれない。

謙信様は私を興味深そうに眺めてから解放してくれた。



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