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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第10章 看病七日目 逃避と告白



なりゆきで安土の姫になったけど、500年後では普通の一般家庭に育った、どこにでもいる人間だ。
人より優れた価値があるかと問われれば首を捻ってしまう。


もっと何か言いたげだったけれど、思いとどまったのか謙信様は押し黙った。
気まずい沈黙が続いたのち、謙信様がやっと口を開いた。


謙信「俺の好いた女のことだが、恋仲の男はいなかった」

「道ならぬ恋じゃなかったんですね。もう気持ちを伝えたんですか?」


きゅっと心臓が縮んだけど、気持ちを奮い立たせて笑顔を浮かべる。


悲しい気持ちは今だけ見ないふりをして…。

現代へ帰る私にできる精いっぱいの強がりだ。


謙信「いいや、まだだ。その女に想いを告げようか迷っている」

「何故か…お聞きしてもいいですか?」


謙信様は唇から小さい吐息を漏らした。


謙信「特定の男が居ないのならどんな手を使ってでも手に入れたいと思った。
 相手も俺のことを憎からず思っていることはわかっている」

「……」


(両想い…なんだ。そうだよね、謙信様に好意を向けられたらどんな人だって……)


さっきまでの楽しいお酒は失恋酒に変わった。
せっかく一歩を踏み出した謙信様を応援しなきゃと思うのに、大きな岩を背負った気分だ。

重苦しい気持ちで息を吐いている間にも謙信様の話は続いた。


謙信「だがな…その女は誰にも言えない大きな秘密を持っているようで…」


(…?)


謙信「俺が気持ちを伝えれば苦しむのではないかと危惧している」

「……」

謙信「その女が苦しむとわかっているのに、手を取りたくてたまらない。
 俺の心を救ってくれた唯一の女だ。
 どうしてもっ……その手をとり、傍に居て欲しいと願わずにはいられない」


謙信様は手が白くなるまで握りしめている。

溢れんばかりの熱の篭った眼差しがこちらに向いていて、動けなくなった。


(待って……それって)


雷が落ちたように全身がしびれた。


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