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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第10章 看病七日目 逃避と告白


「それは……」


じっとこちらを見る目が何かを訴えてくる。
息苦しさを覚えるくらい真っすぐに、真剣な眼差しだった。

気圧されそうな雰囲気に負けないように、お腹にぐっと力を入れた。


「わかりません。想像できないんです」

謙信「何がだ…」

「それはそれは素敵な方なんです。日ノ本一、いえ、この世で一番かと。
 性格も人望も身分も…全て申し分なく、その気になればどんな女性でも手に入れられると思います」


障子の向こうで小雪がひらひら舞っているのを見ながら想いを口にする。

私の存在なんてあの小雪と一緒だ。
ひとかけらではなんの力も無く、地に落ちた途端溶けて消える。
見た目も中身も他と秀でたところもなく、人並みだ。

一生に一度はモテ期がくるなんて友達は言っていたけど、そんなの一度も来たことがない。

身の程を知っているつもりだ。


「そんな方が私を引き留めてくれるなんて想像ができないんです」


脱力気味に微笑む。

謙信様は頬を撫でていた手を引っ込めた。すっと横に逸らした顔が照れているようにも見えた。


(どうしたんだろう?)


疑問を深める前に、謙信様はいつもの表情に戻ってしまった。


謙信「わからんだろう?だが仮の話だ…無理やりでも想像しろ。
 好いた男に説得されたらお前は国へ帰るのをやめるか?」
 

(これ以上踏み込んでこないで欲しい。苦しいから)


唇を噛み、謙信様をひたと睨んだ。


「その方には想い人がいらっしゃるそうです。
 だから無理やりでも想像できません。あり得ない話です」

謙信「いいから、無理やり想像しろ」


何が『いいから』なんだろう。ありえない話なのに。
無茶苦茶なことを言う。


「………」


言葉を失った私はぼうっと外を見続けた。
ごちゃごちゃと考えがまとまらず、謙信様に同じ質問を繰り返され、答えられない。


「謙信様、申し訳ありません。どうしても想像できないんです。
 私のような女を相手にしてくださる方ではないので……」


謙信様の瞳に怒りに似た光が走り抜けた。


謙信「お前は自身の価値を低く見過ぎているのではないか?」

「…?そうでしょうか」


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