第10章 看病七日目 逃避と告白
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食後はお酒がのった盆を間に挟み二人並んでゆっくりとお酒を味わった。
謙信様が言った通り燗をつけたお酒が途中から常温のお酒に変わった。
隣に座ってお酒を注ぎ、注がれているうちにすっかり酔いが回ってしまった。
(嬉しいな、またこうしてお酒を飲めるなんて)
フワフワした気持ちで幸せを噛み締める。
雪見障子の向こうに小雪が散っているのが見えた。外は寒いのに障子一枚を隔てた部屋の中でこんなにも温かな気分でいいものだろうか。
二人で過ごせる時間は有限だとわかっていても、言葉を交わさずとも心地良いこの時間が、
(もう少し…もう少しだけ続きますように……)
まだ太陽は高い位置にあるけど、これ以上動かないで欲しい。
傾いたらこの時間は終わってしまうから。
「止まって欲しいな……」
謙信「何が止まって欲しいのだ」
静かな部屋に響いた呟きを謙信様が聞き逃すはずがない。
盃を傾けるのをとめて私の答えを待っている。
「いえ…」
持っていた徳利を置き、盃を口に運ぶ。
口当たりの良いお酒が喉をスルスルと通っていき、ほぅと息をつく。
酔っているせいかなんなのか吐く息が熱を帯びている。
謙信「言え。さっきからお前の様子がおかしくて酒の味がわからん」
「それは申し訳ありませんっ」
挙動不審だった自覚はある。そのせいで謙信様に迷惑をかけていたなんて…。
自分だけ幸せ気分でお酒を飲んでいたことを反省する。
「謙信様のお好きなお酒の時間をお邪魔してすみませんでした。
止まって欲しいなと思ったのはお日様の場所です」
謙信「どういうことだ」
「謙信様とお酒を飲んでいる時間がとても心地良いので夕方にならなければいいなと思って…。
今はまだ日の位置は高いですが、傾けば傾く程お城へ帰らなければいけませんから…」
コトリと盃が置かれ謙信様が身体ごとこちらに向き直った。
私の倍、いやそれ以上お酒を飲んでいたというのに酔った様子は欠片もない。
謙信「心地良くて城に帰りたくないというのか。お前は石田三成から俺を隠した。
お前は世話になった者達を裏切るような女ではないだろうに。身体が勝手に動いたと言っていたが、何故だ」
「何故って……」
隠し事をしている子供のように口ごもってしまう。
理由は簡単だ。