第10章 看病七日目 逃避と告白
(姫目線)
「はぁ、気持ち良かった。やっぱり大きな湯船はいいもんだなぁ」
誰も居ない脱衣所で独り言を言う。
久しぶりに広い湯船に浸かりリフレッシュできた。
モヤモヤした気分は爽やかな香りのヒバの浴槽とたっぷりのお湯で吹っ飛び、気分爽快だ。
鏡にうつる顔はほかほかと上気している。
「お肌ツルツルだ。温泉なのかな、あとで聞いてみよう」
私が入浴している間に誰か来たのか浴衣が置かれていた。
それに袖を通して髪を拭き、櫛削って、また水気を取る。
髪は拭いて乾かすしかなく、この季節はドライヤーが本気で欲しい。
身支度を済ませて部屋に戻ると……
(わ、わーーーー!?)
先に湯浴みを終えた謙信様が……超絶色っぽい姿で座っていた。
謙信「どうした、そのように明後日の方向を見て」
「いえ、なんだかもう、どこを見ていいかわからなくて」
謙信「?」
謙信様はいつもの着物ではなく夜着を着ていた。
湯上りで暑かったようで、ちょっと気崩している。
胡坐をかいているので夜着の裾からチラリと足が見え、足袋も履いていない。
髪は洗ったあと拭いただけなのだろう、無造作な髪型で雰囲気が違って見えた。
いつもきっちりとした身だしなみの人が見せる『緩い姿』にクラっときた。
謙信様を直視しないようにするにはどうしたらいいか。
真面目に考えて畳ばかり見る羽目になった。
無論謙信様がそれを不審に思わないわけがなくて、
謙信「そのように俯いてばかりで気分でも悪いのか?」
「いえ、そうじゃなくて」
謙信「なら顔をあげろ」
「えーと、それはもう少し待って欲しいです」
謙信「?」
(ほんとに自分の見た目の良さを自覚していないというか…うー心臓に悪い)
困り切っているところで食事が運ばれてきて、やっと気分をかえることができた。
昼なのに当たり前のようにお酒が用意されていた。