第10章 看病七日目 逃避と告白
謙信「俺を助けるのか。信長達を裏切るのか?安土の姫よ」
「安土の皆を裏切りたくないです。
でもっ!あなたには掴まって欲しくない、絶対に」
(逃亡するだけでこんな顔をしているなら、想いを交わしたなら、お前の清らかな胸は痛むだろう)
馬鹿な女だ…だがどうしようもなく愛している。
舞に手を引かれ、行く宛てもなく走り始めた。
走る動きに合わせて長い髪が揺れ、乾いた北風に吹かれるたびに乱れ舞っている。
時折人目を気にして周りを見るたびに必死な横顔が垣間見えた。
見つかれば投獄されるだろうに、身を挺して逃がそうとしてくれている。
謙信「……」
こんなに惹かれ合っているのに諦められるわけがない。お前も俺も。
(もうこの手を離してやれそうにない)
ひと回り小さい手を握り返し、隠れ家に向かって走り続けた。