第10章 看病七日目 逃避と告白
今までどうやって生きてきたのかと驚くほど、戦乱の世に染まっていなかった。
このような呑気な女が相手ならば恋仲の男が強くなければ直ぐに死ぬ。
佐助が懸命に鍛錬を積んでいた理由を理解した。
(だからこそ佐助は舞と恋仲だと信じて疑わなかったのだが)
俺の問いに佐助は逡巡していたが、やがて自嘲気味に言った。
佐助「俺は嘘はつけませんので…確かに舞さんのことが好きでした。
でも舞さんの目はずっと謙信様を追っていました。
複雑な気持ちは今もありますが、上司として、一人の人間として、俺は謙信様を尊敬しています。
そんな人と舞さんが相思相愛なら、俺は傍で二人を応援し、見守っていきたいと思います」
潔く恋心を認めた佐助に感心した。
信頼のおけるこの男となら舞が抱えているという重たい秘密をも共有していけるに違いない。
謙信「いかほどの想いで恋心を手放したか知らぬ。詫びを言うつもりはない…が、お前と永く付き合いたいとは思う。
酷なことかと思うが、俺が居ない時に舞に何か災厄が降りかかった時は守ってやって欲しい」
諦めた相手の傍で過ごし、守る。
なんと残酷な仕打ちだろうか。だが佐助を手放したくはない。
勝手を言っているのは自覚しているが、譲りたくない。
些か心苦しい気持ちでそう言うと、佐助はいつもの飄々とした態度で即答した。