第10章 看病七日目 逃避と告白
(俺が舞から国を奪うということか…?)
佐助「もう一つ重要なことがあって、もし舞さんと恋人になりたいのならこのままずっと死んだふりをして表舞台には決して出ないで下さい」
謙信「それは容易なことだ。戦に出たくなったら変装して臨めば良いことだろう」
佐助「いつぞやのように一発でわかるような変装はしないでください。
俺がチェックしてOKだったら戦に出ても良いですが…」
『チェック』と『OK』がどんな意味かは分からなかったが、とにかく変装を完璧にすれば良いだけの話らしい。
謙信「面倒だが忍び装束を着ていれば良いか?」
佐助「問題ないと思いますが、忍びが表舞台で大活躍するのもおかしい話になりそうです…」
謙信「変装のことはどうでもよい。舞と恋仲になる条件とはそれだけか?」
まどろっこしいやり取りをしているうちに舞が城に着いては面倒だ。
逸る気持ちで佐助を急き立てる。
佐助「舞さんと恋仲になれば、ゆくゆくは秘密を共有することになります。
誰にも、この地上において誰も持ち合わせていない秘密です。
どうか二人で悩まず、俺にも相談してください」
(この地上において…?一体どんな秘密だというのだ)
話が大きくなったが、舞と共にありたいと思う気持ちは変わらなかった。
しかし一つだけ気にかかることがあった。
謙信「佐助…いいのか?」
佐助は眼鏡の奥で目を見開いた。
短い問いでも俺が言いたいこと理解したようだ。
謙信「舞はお前が探していた『例の女』なのだろう?
国から出てきて離ればなれになってしまった舞を守るために忍びになったのではなかったのか。
舞は佐助のことを『大事な友人だ』と言っていたが、お前は、密かに慕っていたのではないのか?」
4年前、戦場で倒れた俺の前に突然現れた佐助は、手に職が欲しいと訳のわからんことを言って忍びの鍛錬を受けた。
理由を尋ねると同郷の女を守るためだという。
たかだか女一人のために、と内心呆れていたが、城下で舞と会った時に、佐助が言っていた女だとすぐにわかった。