• テキストサイズ

☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第10章 看病七日目 逃避と告白


謙信「案ずるな、あの程度の人数で捕まるような間抜けではない」


(そ、そうなのかな。でも病み上がりだし……)


謙信「それより何故お前は戻ってきた」


佐助君の話をバッサリ切り捨てて、謙信様は些か怒っている口調で聞いてきた。


「それはさっきも言いましたが謙信様に捕まって欲しくなかったんです。
 身体が勝手に動いただけです」

謙信「向こう見ずな女だ……立派な裏切り行為に他ならない。
 俺を逃したと露見したら牢から一生出られないというのに、その覚悟があったというのか?」

「そこまで考えていませんでしたけど、牢に入れられたとしても…後悔はしないと思います」

謙信「……馬鹿な女だ。情けは無用と言っておいただろう」


形の良い眉がきゅっと寄り、謙信様は呻くように呟いた。


(もしかして迷惑だったのかな)


冷静に考えれば謙信様と佐助君ならあの人数を撒くなんて簡単そうだ。
一人慌てて余計に面倒事にしてしまったのかもしれない。

落ち着きが足りなかったな、と後悔する。


「迷惑だったでしょうか…余計なことをしてしまったのなら謝ります」

謙信「いや、迷惑ではない」


そういう割に曇った表情をしているので落ち着かない。


「謙信様はなんであんなところに居たんですか?てっきりお部屋で旅仕度をしているものと…」

謙信「お前を追いかけている途中だったのだ」

「……?」


(聞き間違えた?誰を追いかけている途中って言った?)


小首を傾げていると謙信様は素っ気なく話を切り上げた。


謙信「この話はあとだ。この宿は広い湯殿がある。
 この数日働いた疲れを取ってくるといい。走ったせいで髪が乱れてしまっている」

「え、あ、本当ですね」


髪に触れると長く走ったせいか絡まってぼさぼさだ。

話の続きが気になったけど、続きを話してくれる雰囲気はない。
もっと察しの良い人間だったらわかったのかな、なんて思いながらお言葉に甘えることにした。

謙信様は部屋に設(しつら)えられた立派な桐箪笥から手ぬぐいや湯帷子(ゆかたびら)を出してくれた。


謙信「来る途中に湯殿の入口があったがわかるか?」

「はい、なんとなくですが」

謙信「ゆっくりしてこい。せめてもの礼だ」


礼だと言われ、さっきの出来事が無駄じゃなかったんだと胸をなでおろした。


/ 1735ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp