第10章 看病七日目 逃避と告白
「え……」
三成「驚かれるのは無理もありません。ただし日がたっておりますし新たな目撃情報も入ってきていません。本物だったとしてもとっくに安土を去ったと思われます」
7日前…佐助君が熱を出した頃だ。
(謙信様はほとんどあのお部屋に居たから新しい目撃情報がないんだ)
「そ、そう…安心だね」
三成「ええ、ですが念のためこの周辺の長屋を見て回って帰ります」
「!」
感傷に浸っている暇はない。戻って部屋から出ないように伝えないと。
コクンと唾を飲みこんだ。
三成「顔色が優れませんが大丈夫ですか?」
「そうかな、寒いから血色が悪いだけだよ。
それより荷物ありがとう。ちょっと用事を思い出したから行くね」
三成「はい、お気をつけて」
なんの疑いもなく三成君は私に手を振った。朗らかな笑みに胸がチクンと痛んだ。
このままお城に帰ることなんてできない。
これはれっきとした裏切り行為だ。
(ごめん、三成君)