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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第9章 看病七日目 岐路


反物は背負い、お鍋や食器が入った風呂敷と傘を手に持てばこれ以上何も持てない。

佐助君に戸を開けてもらい外に一歩踏み出して、身体を反転させる。


「家出してきたみたいだね」


少し動くと風呂敷の中から食器がカチャと音を立てる。


佐助「城の近くまで送るよ」

「大丈夫、最近衰えたから筋力アップしたいし。
 佐助君は病み上がりで越後に帰らなきゃいけないんだから少しでも休んでね」

佐助「ありがとう。一緒にタイムスリップしたのが舞さんで良かった。
 正直もっとこっちにいて欲しいけど…さよならだ。元気で」

「こちらこそだよ。おかげさまでこっちでの生活も楽しめたし、いろんな人と知り合えて…良かった。
 ありがとう、佐助君」


傘を置き、戦国ライフを楽しんだ友人と最後の握手を交わした。


謙信「………」


隣に立つ謙信様に向き合う。
筋力アップとかタイムスリップという単語がわからず、チンプンカンプンな顔をしている。


(ふふ、可愛いです、謙信様)


怒るから言わない。


「安土の姫と知りながら看病に通わせて頂きましてありがとうございました。
 たくさん…謙信様のことを知ることができて毎日楽しかったです。
 お世話になりました」


見納めだ。しっかり焼き付けておこう。

真正面からじっと端正な顔をみつめると、美しい二色の瞳に見返された。

謙信様は右手をゆるりと刀の柄にのせ、それがすごく様になって格好良かった。


謙信「息災でな…」


短い別れの言葉をもらい、一礼して二人に背を向けた。
戸の閉まる音が、謙信様達と私の世界を隔てる音に聞こえた。


(さようなら、謙信様。あなたのことが大好きでした)


交わっていた道が一歩進むごとに分かれていく。
二度と交わらない道を私は進む。


「……っ、ぅ」


塞がった両手では涙を拭うこともできず、襟巻の下に隠れた唇をギュッと噛んだ。


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