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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第9章 看病七日目 岐路


――――
――

部屋に戻ると佐助君の予想通り謙信様が不機嫌オーラ全開で上り口に座って待っていた。

戸を開けて直ぐのところに謙信様が居たものだから、びっくりして後ずさってしまった。


「た、ただいま戻りました」

謙信「佐助っ、このような寒い日に何の用意もなしに女を連れ出すとは何事だ!」


謙信様は怒りを露わに腰をあげ、外套を広げて私の身体を包んでくれた。


「えっ、わっ!?あ、ありがとうございます」

謙信「大事ないか?」


外套の前をきっちり合わせられ心配そうに覗き込まれた。


(な、なんだか謙信様が凄く気遣ってくれているような…)


秀吉さん並みに世話をやいてくれる。
一体どうしたんだろう。


「はい、少しの間だけですから」

謙信「そうは言うが鼻の頭が赤い。
 囲炉裏はもう使えん。火鉢で暖をとれ」


このままお暇の挨拶をしようと思っていたのに、気がつけば火鉢の傍に座っていた。


「ありがとうございます。女嫌いだなんて信じられません。
 こんなに謙信様は優しいのに…」


外套と火鉢の柔らかい暖かさが身に染みる。


佐助「それは舞さんにだけだと思うけど」

謙信「佐助…余計なことを言うな」


パチパチと火花を散らし始めた二人を慌てて止める。


「わわ、喧嘩しちゃ駄目ですよ!ふふ、喧嘩するほど仲が良いって言いますものね。
 いつまでも仲良く、お元気でいてくださいね?」


良かった、笑ってお別れが言えそうだ。もう少しだけ温まったら帰ろう。


(笑っていられるうちに…)


佐助「舞さん……」


泣くのを堪えているのを佐助君にはバレてしまっているけど。


ここで過ごした日々は宝物だ。
この先別々の道を歩もうとも、一瞬でも交わっていられたのだから……


「謙信様、佐助君。長居するのも悪いので、そろそろお暇します」


謙信様に外套を返し自分の羽織と襟巻を巻いた。
下がりそうになる口角を襟巻を引き上げて隠した。


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