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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第9章 看病七日目 岐路


「もう……」

謙信「?」

「もうこれ以上偽りたくないんです。身分も、心も……。
 だから帰るんです」


現代だったら好きな人に好きって言える。
でもここではできない。

好きだけど、この時代の人に好きって言えない。


謙信様に好きって言えない。


(こんなに心を奪われた人は初めてだったのに、言えない)


謙信「顔をあげろ」


顎を掬われ、強制的に上向かされ目が合った。


「!?」


謙信様はとても苦しそうな顔をしていた。

辛そうに顔をしかめ、二色の瞳が何かを湛えるように揺らめいている。


謙信「お前の気持ちはわかった。だが…いつか戻って来るのか、佐助の元に」

「……」


ワームホールは今回で最後。
もう二度とこの時代に戻ってこない。

私の表情と沈黙から否定と捉えた謙信様は顔を険しくさせた。


謙信「息をしているだけで格好いいと惚気たのはお前だろう?
 それほどまでに佐助に惚れているのに、何故離れる?
 安土を出て佐助の元に来れば良いではないか?」


(違う、違うんだよ。息をしているだけでもかっこいいのは…っ)


涙が頬を滑り落ち、ぽろっと言葉がこぼれた。


「私と佐助君は恋仲ではありません」


シン、とした沈黙の後、


謙信「なっ…んだと!?何故今まで偽っていた!」


(えっ、えっ!?なんか怒ってる?)


血相を変えて、といったら失礼かもしれないけど、謙信様らしからぬ驚きようだった。
凄い勢いで詰め寄られ、涙がひっこんだ。


「何度も訂正しようとしましたがその度に邪魔が入って…」


記憶を辿っているのか謙信様の目線が泳ぎ、やがて納得して頷いた。


謙信「確かにお前達の口から恋仲だとは一度も聞いていないな…。
 それにお前や佐助が何かを言いかけてやめたことが何度もあった」

「お、覚えていてくださって光栄です。
 その…誤解です。佐助君は大事な友人です」


鳩が豆鉄砲をくらったような顔…の謙信様を見られるとは思わなかった。
貴重な表情を見ながら続けた。


「私は片思い中ですが、同郷の人以外に深入りしてはいけない事情があるんです。
 ……恋しくても打ち明けられないんです」


我に返った謙信様が顔をしかめた。


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