第9章 看病七日目 岐路
(姫目線)
謙信「佐助の病も治った。明日越後へ発つつもりだ」
朝食を出した際に言われ、遂にきたと思った。
大晦日までわずかだ。そんな大事な時期に謙信様が城を空けておけるわけがない。
数日以内に越後に帰るだろうと予想していた。
毎日こうして会える日も終わりだ。
「わかりました。こういってはおかしいですが、寂しくなります」
謙信「敵将にこれ以上の情けは無用。急だが荷物をまとめにかかってくれ」
「はい」
昨日の帰りがけ、佐助君が現れてワームホールは2月某日、安土の外れにある野原に発生すると教えてくれた。
そして今回を最後にワームホールは99%発生しないだろうとも。
(謙信様と本当にお別れだ。もう一生会えない)
改めてそう考えるとスッと体温が下がった気がした。
(いいんだ、これで。過去の人に関わっちゃいけないんだ)
お盆をギュッと抱きしめた。
佐助「舞さん…」
いいの?と佐助君が目で訴えてくる。
昨日のうちに私は現代へ帰ると告げていた。
佐助君は引き留めてくれたけど、歴史を変えてしまうのが怖いからと伝えた。
よく考えればしてはいけない、という点で考えれば私も道ならぬ恋をした。
戦国時代の有名な武将で
歴史上独身を貫いた人で
安土の敵で
私のような平凡な人間なんか足元に及ばないくらい素敵な人で
『謙信様のことは好きだけど諦めなきゃ…私は現代に帰る』
そう伝えると佐助君は物言いたげな顔をしていた。