第9章 看病七日目 岐路
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夜が明け、いつも通り舞が長屋にやってきた。
毎朝そうであるように襷がけをして髪を1つに結い、朝餉の仕度をしている。
思えば日を追う毎に火の扱いが上手くなった。
(この姿を見るのも今日で最後か……)
いつまでもそこに居ると錯覚してしまいそうなほど、小さな後ろ姿はこの場に馴染んでいる。
だが春にここへ来たとしても舞はこの長屋どころか、安土にさえ居ない。
今は確かに居るのに、儚く俺の前から去ってしまう。
謙信「……」
佐助「……」
朝から佐助は何か言いたげだ。
なんだと問いかける余裕さえ、俺にはなかった。