• テキストサイズ

☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第1章 触れた髪


――――
――

帰り道。

あんなにお酒を飲んだのに、謙信様はしっかりとした足取りで歩いている。
それに対して、私はというと…


(結構酔ってるなぁ。足元がふわふわする)


城下では躓いて怒られてしまったので、できる限り気を付けて歩く。


(酔ってない、酔ってない。真っすぐ歩ける)


自己暗示をかけようとしても、足の裏が捉える地面の感覚はフワフワと雲のよう。


謙信「お前の奉公先まで案内しろ。送っていってやる」


足を止めてこちらを見る謙信様に私は首を横に振った。


「いいえ!ごちそうしてもらったのに、さらに送ってもらうなんて。
 一人で帰れますので、もうこの辺で大丈夫です」


城下の大通りまでまだ少しあるけれど、まだ夕暮れで明るいし問題ない。

けれど謙信様は思いっきり胡散臭そうな表情で言った。


「黄昏時だ。夜と同様、人をかどわかす者や、物の怪の類が出てくる。
 お前のような隙だらけの女は恰好の餌食となる。
 遠慮する暇があったら、さっさと案内しろ」


(心配して下さってるんだよね、優しい方だな)


謙信様の口から物の怪なんて言葉が出るなんて意外だった。


(…いや、ちょっと待って?奉公先までって、どうしよう?)


もう少し一緒に居たいと思う気持ちはあるけれど、安土城まで送ってもらうわけにはいかない。


「謙信様、本当に大丈夫ですから…」


謙信様は片眉をあげて私の手首を掴んで歩き出した。

城下の大通りのほうへ向かっていたのに、急に方向を変えて細い坂道を上がっていく。

立派な杉の木が立ち並ぶその道はカーブになっていて先が見えない。

気づくと私の不安を知らせるように、握られた手に力を込めてしまっていた。


(こうしていると少し安心するな)


「あの、謙信様?どこへ?」

謙信「黙っていろ。直に着く」


越後の話をしてくれた時は穏やかな雰囲気だったのに、少し冷たいような、いつもの謙信様だ。


「…はい」


(送るって言ってくださったのを二度も断ったから、怒らせちゃったかな)




/ 1735ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp