第8章 看病六日目 道ならぬ恋
伊勢姫様のこと以来、ずっと女の人を遠ざけてきた謙信様がようやく見つけた恋なのに。
よりによって相手がいる方に恋するなんて。
「恋した方はどんな人なのですか?」
やるせなくて、でも話だけでも聞いてあげたい。
謙信「何をしていても愛らしくてならない女だ。それ以上は言えぬ」
「それ、わかります」
謙信「?」
「何をしていてもぜーんぶカッコイイ人が居るんです。
息を吸っているだけでもかっこいいんです…もう、重症でしょう?」
辛そうだった謙信様の表情が泣きたくなるような切ないものに変わった。
謙信「ああ、俺もお前も重症だな。お前にそう思われる男は果報者だな」
「ふふ、謙信様に想われる方も幸せ者ですね」
苦しそうに笑った顔をみると泣きたくなった。
(謙信様のことなんだよ…)
目の前にいるのに届けられない想いに胸が締め付けられた。