第8章 看病六日目 道ならぬ恋
(姫目線)
佐助「感動だ…。こんな立派な年越しそばが食べられるなんて」
「おおげさだよ、ほら冷めないうちに食べて。
はい、天ぷら!」
細かったり太かったりと不揃いなお蕎麦と、海老天、イカ天、野菜天などをのせた大皿をドーンと置く。
謙信「………」
「好きな天ぷらをとって食べてくださいね!お蕎麦の上にのせて食べても良いし、そのまま食べても良いですし!」
瞬きを繰り返す謙信様は、佐助君が食べるのに習って食べ始めた。
天ぷらを齧っていても、お蕎麦をすすっていてもどこか上品だ。
(ほんっと重症だな)
諦める気があるのかと自分でツッコミをいれる程胸が騒がしい。
明日こそはときめかない!と決めてもあっさりと翻弄される毎日だ。
(一緒に居る間は無理だなぁ、今だけときめくのを許してもらおう)
誰に許しをもらうかはさておき、二人共よく食べてくれるので作った甲斐があったみたいだ。
(ふふ、食べ盛りの息子をもった気分)
パクパク食べる佐助君に対し、謙信様はゆっくり、静かな動作で食べている。
それなのに食べる量はそう変わらない。
一口が大きいのかと思えばそうでもない。
(よく噛んで食べているし……魔法?)
お蕎麦をすすりながら首をかしげた。