第8章 看病六日目 道ならぬ恋
だがそのような呼び方をしているのを聞いた事がないし、書物で読んだこともない。
(年越し蕎麦という珍しい風習があれば記憶に残っているはずだが……)
昨日舞に、国は蝦夷か琉球かと問うたが困った顔をしていた。
どちらでもないようだったが、やはりはっきりどことは言わなかった。
日ノ本で間違いないが……一体どこだ。
現在の日ノ本に存在している国々の知識は頭に入っているのに、舞と佐助の国はどこの国にもあてはまらない。
舞が居るうちに国を突き止めねばならない。
帰ったら最後、二度と会えない予感がする…。
人が真面目に考えている最中にも二人は和気あいあいと話している。しまいには、
「おいしくなーれ、おいしくなーれ、なんてね」
佐助「それは……某おじさんがパンを作る時の魔法の言葉だね」
「さすが!」
……なんだそれは。
いい歳した男がそんなことを言いながら『ぱん』とやらを作っているのか?
謙信「……お前達の国は大丈夫なのか?」
思考を中断し二人の輪に加わった。
そのうち蕎麦切りを頼まれ、佐助と悪戦苦闘すること四半時。
舞が綺麗にこねた蕎麦の塊は不揃いな蕎麦に化けてしまった。