第8章 看病六日目 道ならぬ恋
(謙信目線)
舞は朝餉の片づけを終えて一通り掃除を済ませると、張り切った顔をして土間に下りていった。
(何をやるつもりだ?)
佐助も同じことを考えたらしく、目が合った。
そうこうしている間に舞は昨日餃子を包んでいた台に2種類の粉を出して分量を測っている。
(気になる…。また俺が知らぬ料理を作るつもりか)
それならば作る工程を最初から見ていたいものだ。
そっと立ち上がると、佐助も立ち上がった。
(何故お前までくる?)
まだ病人の域を脱していないのだから座っていれば良いものを。
しかし佐助も平熱ともなればさして眠くならないようで、暇を持て余しているようだ。
佐助は舞が用意していた粉を見ただけで蕎麦だと当ててみせた。
どうやら昨日年越し蕎麦の風習がないと聞いて、作る気になったようだ。
「ふふっ、これを食べると『一年が終わったなー』って思うよね!
でもそば粉がこれしか手に入らなかったから小麦粉と混ぜて二八蕎麦にする予定」
佐助「舞さんが作ってくれるなら九一蕎麦でも十零蕎麦でも楽しみだ」
最初は意味がわからなかったが、どうやら粉の割合の話のようだ。
「十零だと、うどんだよ。佐助君ったら」
(なるほど、十零でうどんということは頭の数が小麦粉、後の数が蕎麦粉を表しているのか)