第7章 看病五日目 謙信様と餃子
謙信「もう一つのこれはなんだ?丼に何か入っているが…これは何かの尾か?」
「それは年越しそばです。海老天がのっているので海老のしっぽです。
もうすぐ大晦日なので食べたいなぁ、なんて…」
(また食いしん坊だってからかわれるかな)
身構えたけど謙信様はキョトンとした顔をしている。
謙信「年越し蕎麦…?」
「あ、あれ?こちらにはない風習なのかもしれませんね。
国では大晦日に蕎麦を食べる風習があるんですよ」
定番すぎて、この時代にもあるものだと思っていたけどそうではないのかもしれない。
謙信「少なくとも俺の城で大晦日に蕎麦は出てこない」
「じゃあ私の国だけの風習なのかもしれませんね」
年越し蕎麦が食べられるのはもう少し後の時代なのかもしれない。
そういえば城下で、うどん屋は見かけるけど蕎麦屋を見た記憶がない。
(蕎麦自体があまりメジャーじゃないのかも?)
この時代と500年後の間に横たわる長い長い時間が文化の違いを生み出している。
謙信「お前と佐助の国は本当に遠い国なのだろうな。蝦夷や琉球より遠いのか」
う、と返答に困る。
察した謙信様が助け舟を出してくれた。
謙信「日ノ本……なのか?」
「はい」
謙信「ならば良い」
謙信様は安心したように息を吐き、紙を返してくれた。