第7章 看病五日目 謙信様と餃子
(姫目線)
沢山作った餃子は私達3人のお腹に全て収まった。
残ったら持ち帰ろうと思っていたのに、気がつけば最後の1つを謙信様と佐助君がとりあいっこしていた。
(ふふっ、無表情でとりあいっこするなんて、流石謙信様と佐助君だったな)
宙に箸を止め、無言でにらみ合いを始めた時は何事かと思った。
(そのくらい美味しかったってことだよね、嬉しいな)
佐助君の滋養のためだったけど、好きな人に手料理を気に入ってもらえるなんて、すごく嬉しい。
それに謙信様が作った餃子を食べるなんて、この先絶対ない。
謙信様が包んだというだけで100倍くらい美味しく感じた。
食後は佐助君とのんびりお茶をして、片付けを済ませる頃には佐助君は寝てしまっていた。
特にやることがなかったので書き損じの紙を貰って、裏にえんぴつで絵を描いて過ごすことにした。
佐助君が寝ている場所から一番近い柱に背を預けて座る。
墨が紙の裏まで染みているので、それを避けて小さな絵をいくつか書いていった。
ふと思いついて、ある人物を描いてみる。
(佐助君の二頭身キャラ、可愛く描けちゃった!)
忍び装束を着て、謙信様が書いた『一』の文字に片手でぶら下がり、もう片方の手にはまきびしをのせている。
(佐助君がうまく描けたから、謙信様も描いちゃおう)
謙信様と言えば信玄様、信玄様といえば幸村。
気分が乗って面白いくらいサラサラと描ける。
(デザイナーじゃなくイラストレーターになったほうが良い?)
4人ともうまく描けて一人、ニンマリする。
佐助君に見せたら笑ってくれるかな、なんて起きるのが待ち遠しい。
謙信「……楽しそうだな。何を書いている?」
唐突に話しかけられて、咄嗟に絵を見られないように紙を胸に引き寄せた。
「ただの落書きです。謙信様にお見せするほどのものじゃ……」
謙信「お前が何を描いて笑っていたのか見たい。
それとも俺に見られては困るようなものか?」
(そんなことないけど、こんな二頭身キャラを見せて良いのかな…)
(無礼にあたらないかな?)
「ほんと、たいしたもの書いていませんからね?
怒らないで下さいよ?」