第7章 看病五日目 謙信様と餃子
謙信「お前が望むならそうしよう」
謙信様は最初面食らっていたけどちょっぴり嬉しそうに笑い、あっという間にたすき掛けをした。
(う、襷掛けをしてる時も、した後もカッコイイ)
せっかく無になって落ち着いていた心臓が早鐘を鳴らす。
腰掛は1つしかないので半分こで座ったから余計だ。
(近い!ていうか、くっついてる!)
謙信様が座っている右側があったかい。
頭から湯気が出そうなくらい動揺しているのに、落ち着く暇もなく話しかけられる。
謙信「それでどうやって作るんだ?」
「えっと、皮を左手に持ち、こうしてこうして………」
動揺していても身体が覚えていてくれるので綺麗に餃子が出来上がる。
謙信「……こうか?」
皮のふちを濡らし半分に折りたたむところまではスムーズにこなし、ひだを1つ作ったところで謙信様の手が止まった。
「はい、とても上手です。あと二つ、三つひだを作ってください」
慣れない手つきで餃子を作る顔は真剣だ。
最後のひだを作る前にムニュ、と種がはみ出た。
「ふふ、少し種を入れ過ぎかもしれません。貸してください」
受け取って種を中に押し込み、ひだを1つ作って謙信様の前に置く。
「はい、修正したのでもう1つひだを作って完成です」
謙信「上手いものだ」
「慣れですよ、慣れ!失敗しても直しますからどんどん作りましょう!」
笑いかけると端正な顔立ちがすぐそこにあって、サッと目を逸らす。
(一日分の鼓動を3分で打てそう……)
私の動揺には気づかず謙信様は興味津々で皮に触れ、種をのせ、包んでいる。
手が汚れるとかそんなのは全然気にしていないようだ。
(表情が乏しい方だと思っていたけど、最近喜怒哀楽がすごくわかるようになってきたな)
今はとても楽しんで下さっている。
嬉しくて胸がキュンと締めつけられた。