第7章 看病五日目 謙信様と餃子
(よし、このくらい皮があれば良いかな)
古ぼけた腰掛に座って積み重なった皮の山から一枚とり、中央に種を置き、包んでいく。
打ち粉を振った台の上に完成した餃子を並べていく。
(うん、なかなか良い感じ)
単調な作業をしていると最近ざわつきがちな心が無になって心地良い。
(楽しいなぁ)
台の上にどんどん餃子を並べていく。
ふと台に影ができて振り返ると、謙信様が物珍しげな顔をして立っていた。
「あ、謙信様。これは餃子と言って、中国じゃない…大陸?の料理です。
小麦粉で作った皮にみじん切りにした野菜やお肉を包むんです、あちらでは茹でて食べることが多いそうですが、今日は焼きます」
謙信「大陸の料理を何故お前が知っているのだ?」
「えーと、私の国は大陸の情報が結構伝わってきておりまして……」
(どうやって切り抜けよう!?)
ちらりと佐助君を見ると、タイミング悪く寝てしまっている。
(佐助君、寝てる!ピンチ!)
謙信「なるほど、俺の城にも大陸の歴史や兵法の書物がある。
お前の国には食文化の書物が伝わっているのだろうな」
「は、はい」
(一人で結論を出して納得してくれた!)
そっと息を吐いて止まっていた手を動かす。
けれど感じる視線に手は直ぐに止まった。
「あの、謙信様?そのように見られると作りづらいのですが……」
謙信「いや、なかなか良い手つきだと感心していたところだ。
お前は裁縫の技術といい、手先が器用なのだな」
「ありがとうございます。でも餃子ならすぐ作れるようになりますよ。
そうだ、良かったら一緒に作りませんか?」
興味深そうに見ていたので、ダメもとで誘ってみた。
一国の城主を餃子づくりに誘うなんてと思うけど、興味を持ったのならやってみるのもありなんじゃないかと……