第6章 看病四日目 二人の香
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長屋がひっそりと寝静まった深夜。
越後からの書簡と二人分の着替えを持った部下が長屋を訪れ、それらを受け取りある事に気づいた。
謙信「明日の着物はあるが、夜着はどうした」
部下「天候が悪く完全に乾いておりませんでした。申し訳ありませんが予備のものをお召になってください」
謙信「……わかった」
部下が去ったあと、寝室で悩む。
予備の夜着はあるにはあるが、舞に貸してしまった。
どうしようかと迷い、夜着を寝室に持ってきた。
きっちり畳まれて綺麗な状態だが、舞が着たことに変わりはない。
明日部下に洗濯を命じようと、夜着は床に置いた。
謙信「仕方ない、このまま寝るか」
着物の替えはあるのだから、今着ているものに皺が寄っても問題ない。
着物のまま布団に横たわり目を閉じた。
謙信「ふぅ…」
佐助が寝込んでから4日が過ぎた。
年の瀬が迫り、越後からは佐助を軒猿に預け帰城して欲しいと再三文が届いていた。
それをなんとかかわし、書簡をやり取りすることで政務に支障が出ないようにしてきた。
息子に跡を継がせてはいるが、俺が生きているのだからと重鎮達は主に俺に判断を求めてくる。
城に帰れば一言で済むものを長々と文字に綴らねばならず、正直面倒だが佐助を置いて帰る気にもならず、それに…
瞼を閉じて考えに沈んでいると、嗅覚がそれを捉えた。