第92章 現代を楽しもう! ❀デート編(R-18)❀
謙信「すまないっ」
「ん!」
頭を包むように抱きしめられた。
謙信「なるべく痛まないよう配慮したが俺の技量の浅さ故、舞を傷つけた」
「謝らないでください。私がお願いしたことでしょう?
血を流してでも奪って欲しかったんです。ありがとうございます、謙信様」
腕に囲われ、暗くなった視界の中で目を瞑る。
「大丈夫です。数日痛むでしょうけど、傷は治るものです。
私…、今、いつもより謙信様を近く感じられます。あなたがくれた傷や痛みが嬉しい」
謙信「俺はっ…俺は……嫌だ!舞にもう二度と傷を負わせない!
お前の血を見た時、この胸が引き裂かれそうだった!」
首を横に振る振動が伝わってくる。
「ふふ、はい…。無理を言って申し訳ありませんでした。
全部私の願ったことです。気に病むくらいなら忘れてください」
謙信「忘れられるはずがないだろう?お前が血を流して俺に捧げたくれたのだ。
……間違いなく貰い受けた。今日のことはお前を二度と傷つけない戒めとする」
頭をかき抱くようにしていた腕が緩んだ。
謙信様は私の上に覆いかぶさるように四つん這いになると真上から見下ろしてきた。
切れ長の目が暗い光を湛え、私は満たされて微笑み返している。
謙信「憑物(つきもの)がとれたような顔をして…。そんなに俺に奪って欲しかったのか?」
「ふふ、はい。謙信様……我儘をきいてくれてありがとうございました。大好き…です」
あんなことをお願いしてしまってと、照れ笑いになった。
口づけがしたくて両手を伸ばすと、その手を取られ、片方ずつにチュッ、チュッと唇が落とされた。
謙信「愛しい妻の我儘が、ただの我儘ではないのが些か困るのだが…。俺も好いている。誰よりも…愛している」
言葉通り本当に困った顔をして、やっと謙信様が笑ってくれた。
遠慮がちに唇が寄せられ、唇同士が距離を失くした。
「ん……」
深まらない口づけに焦れて首を伸ばし、綺麗なラインを描く顎や喉仏をぺろりと舐めた。
ピクリと固まった謙信様が咎めるように身を引こうとしたので、首の後ろに手を回して引き留めた。