第6章 看病四日目 二人の香
(姫目線)
佐助「おはようございます、謙信様」
「あー、ごめん。私だよ。眼鏡かけて」
昼食の用意ができたので佐助君を起こすと、謙信様に間違えられた。
眼鏡をかけてピントがあった佐助君は目を瞬かせた。
佐助「舞さん、その格好はどうしたの?」
「着物を汚しちゃって、乾かしているところなの。
佐助君の忍び装束を借りようとしたんだけど謙信様が夜着を貸してくれて……」
説明しているうちに気恥ずかしくなって語尾が小さくなっていく。
佐助君は私の気持ちを知っているから、きっと今の私の気持ちを察してしまうだろう。
案の定佐助君は意味ありげに口元を緩めた。
謙信様に聞こえないように小さく声をひそめ、
佐助「良かったね」
と言ってくれた。
「う、うん」
頬に熱が集中し、俯く。
チラッと上目遣いで佐助君を見る。
佐助「男物のワイシャツやTシャツを女性が着ると萌えるものだけど、着物も良いものだね。謙信様はなんて?」
「特に何も。ぶかぶかだし、きっと変だって思ってるんじゃないかな」
佐助「そんなことないよ。今の君は絶対可愛い。
サイズが合っていない着物を『頑張って着ている感』が凄く」
「そう言ってくれるのは佐助君だけだよ、ふふ」
佐助「ほら、口元を覆うと袖がめくれて肌が見えるのも、動いた拍子に合わせがゆるゆるになるのも、いつも以上にうなじが綺麗に見えているのも、全部可愛いと思う」
真顔で言われ、指摘された箇所を慌てて正す。
「も、もう佐助君ったら!昼餉を運んでくるから待っててね」
それ以上いわれると恥ずかしいので退散した。