第91章 現代を楽しもう! ❀お花見編❀
謙信「戻るか。この辺は土手に花が咲いている分、蜜蜂との距離も近かろう」
「はい」
返事をしながら周りに人が居ないか一度確認する。
(よし、今なら…)
座っていた場所に戻ろうとした謙信様の手をひいた。
半分こちらに背を向けていた謙信様が振り返る。
謙信「どうした?」
「すみません、こんな時になんですが…」
私を守ってくれた大きな手に口づけをした。
謙信様が驚いて動きを止めた。
「ありがとうございます。蜂から守ってくれたことも、昔の恋人とのことを怒らずにいてくれたことも…」
もう一度手の甲に口づけを落とす。
「ふふ!私は恋人とボートに乗って、それから……キスをしてみたかったんです。
謙信様が私を心配してくださっている時にごめんなさい」
謙信「舞……」
ボートに座ってみたらキスできる距離じゃないし、意外と人目があるとわかって諦めていたけど、なんとかできた。
元の場所に戻れるようにと捕まえていた手を解放してあげる。
(本当は口にだったけど、流石にね)
学生の頃ならまだしも、良い大人がそれをしちゃいけない気がした。
手の甲にキスしただけでも大満足だ。
憧れていたことが全部できて嬉しい。
「長年の夢だったので嬉しいです。まさか大人になってから叶うなんて思いもしませんでした」
感激していると、謙信様は元の場所に戻らず、より身体を近づけてきた。
重心が偏り、ボートがギシリと傾いた。