第91章 現代を楽しもう! ❀お花見編❀
龍輝「ママ、パパ!!あれに乗りたいっ!」
「わわっ!?」
突然ドーンと体当たりしてきた龍輝に、甘い空気はあっけなく破られた。
短い指が指す方向には白鳥の形をしたボートがある。オールではなく、自転車のようにしてペダルをこいで進むやつだ。
「いいよ。じゃあ、結鈴も連れてきてくれる?」
龍輝「うん!ゆーりーー!おふねにのるよ~~!」
でっかい声をあげながら、龍輝が走っていく。
謙信「龍輝には知識やしきたり云々(うんぬん)の前に、空気を読むことを覚えさせねばならんな」
「あれでも読む時は読んでいますよ?」
謙信「全然足らん」
「ふふ、だってまだ5歳ですもの。まだまだですよ」
謙信「俺が5歳の時は寺に預けられて、それなりに分別がついていたものだが…」
「私なんか5歳の記憶さえないです。天才肌の謙信様と比べてしまうと誰も適いませんよ?」
謙信「まあ良い。この時代では子供の成長に合わせて事を成すようだからな。今は伸び伸びと育てば良い」
「そうですね。こちらに居る間だけでも……。
それを言ったら私もそうですけどね。『謙信様の妻は型破り姫』と言われないように、戦国時代に行ったらたくさん勉強しなくてはいけません」
決心を口にすると、形の良い唇が引き結ばれた。
謙信「そのままで良いと言っているだろう?勉学に明け暮れて、俺と共に居る時間が減るようなら許さんからな」
そこで一旦言葉を切り、謙信様が何か思いついたようにニヤリと笑った。
佐助君じゃないけど、突拍子もないことを言い出しそうな気配に一歩ひいた。