第91章 現代を楽しもう! ❀お花見編❀
「えっ……や、やだ、謙信様ったら、ふふ、ありがとうございます。
型にはまっていなかったのはただ単に『知らなかったから』だと思いますよ。20歳越えた女性が戦国の世ではそんな風に思われていたっていうのも、今知りましたから。知らないから恥ずかしいとも思わないですし、堂々と?していただけのことです。
それに現代の人間が戦国時代に居たのですから、どこにも居ない物珍しい女に見えるのは当然ではないですか?」
出会ったばかりの頃、謙信様に息の仕方も歩き方も異質だと言われたのを思い出した。
私の言い分に謙信様は違うと首を横に振った。
謙信「夫の立場だから言っているのではない。
お前は手を伸ばしたくなる存在だった。だから安土の連中に大事にされていたのだろう?
帰りが少し遅くなっただけで門前で待たれる程に…」
日が沈んでから帰ると城門のところで待ってくれていた秀吉さんと三成君を思い出した。
日中であっても、どこからともなく現れて、家康や光秀さんが荷物を持ってくれたこともあった。
「えっと、それは物を知らないから危なっかしいと思われていたのではないかと」
普通に歩いていたつもりなのに、光秀さんに『そのようにフラフラ歩いていると物取りにあうぞ』と何度も言われたし、政宗にも『外で無暗に大口で物を食うなよ。毒を警戒しろ、お前は』なんて注意されたこともあった。
きっとあの時代では普通のことを何一つ身につけていないから心配してくれたんだと思う。
謙信「それも一理あるが、それだけの理由ではない。お前は違う」
遊具の下で我が子を見ている保護者が近くに沢山いる。
私はその中の一人で、他と何も変わらない。
「そうですか?」
どこが違うと言うんだろう。
謙信「戦国の世でお前は周りから浮き上がって見えるほど異質な存在だった。
この時代に居るお前を見ると、そこまでとは言わぬがやはり他の者と違う。元居た時代に居るというのに、お前は他から浮いて見えるぞ?」
謙信様が言いたい事が少し理解できた気がした。