第91章 現代を楽しもう! ❀お花見編❀
「いやぁ……ちょっと無理っぽいです。結鈴は二十歳くらいで良いんじゃないかと思いますけど」
『二十歳でも早いけど』と思っていると、謙信様の目が冷ややかに細められた。
謙信「あちらの時代で未婚の二十歳の女など見向きもされない。
その齢になるまで縁談がなかったのは何か理由があるのではと言われるぞ」
「え!?そうなんですか?二十歳なんてまだまだ全然いけてると思いますけど」
それを言うなら私はあちらに居た時『その齢になるまで縁談がなかったいわくつきの女』とでも思われていたのだろうか…。
「謙信様。安土に居た頃、私はもしかして『この齢になるまでお嫁に行けない憐れな女』だと思われていたのでしょうか」
そう言えば針子の仕事をしていた年下の子達もほとんど既婚者だった。
気付いていなかっただけで、行き遅れの姫だと憐(あわ)れみを持たれていたのかもしれない。
しょんぼりしていると、子供達を見ていた謙信様が凄い勢いで私を見た。
空いていた手を握られ、その強さから『違う』と言っているのがなんとなく伝わってきた。
謙信「そんなことは全くない。お前は別格だ」
「別格?私が?」
戦国時代から帰ってきて現代に身を置いているから猶更感じる。私は現代において本当に、普通の人間だ。
信長様みたいに人をグイグイ導く性格でもないし、謙信様のように不思議な魅力で人を惹きつけるカリスマ性もない。
働きながら子育てしているだけの普通の人間だ。
理解できずに首を傾げると謙信様は熱心な口調で説いた。
謙信「醸し出す雰囲気といえば良いのか、表現し難いが、型にはまらず生きている様子が小気味よく感じる存在だった。
歳のことなど気にならぬほど、戦国の世において舞はどこにも咲いていない稀有で美しい花だった」
細く長い指先が大事なものに触れるように、優しく髪を梳いてくれた。