第91章 現代を楽しもう! ❀お花見編❀
「小さい子供を二人連れてお花見…というのは私にとっては敷居が高くて出来なかったんです。
皆さんにはとても感謝しています」
花を見ている隙に二人がどこかへ行ってしまわないか。
トイレと言われても荷物を見張ってくれる人も居ない。
あっちだこっちだと言われてしまえば大荷物を抱えて歩き、抱っこ!なんて強請(ねだ)られたら、疲れるどころの話じゃない。
そんな小さな問題がいくつもあってお花見は避けてきた。
信玄「姫は1人で頑張ってきたんだもんな。
今日は下ばかり見ていないで花を見上げて楽しんでくれよ。
結鈴と龍輝は俺が見ていてやる」
謙信「そのセリフは俺のものだろう。しゃしゃり出てくるな、信玄」
信玄「馬鹿だな。謙信が子供達を見ていたら、姫は誰と花を愛でるんだ?
まぁ、謙信がそう言うなら姫と一緒にあの小舟に乗って桜を見るのも良いな」
池に浮いているボートには定番と言うかカップルが乗っていて、仲良さそうに笑い合っている。
「わぁ、乗ってみたいな」
『謙信様と一緒に』という意味だったのに、謙信様の秀麗な眉が寄った。
謙信「よもや信玄と?」
「ま、まさか!謙信様とに決まっているじゃないですか!」
謙信「本当か?」
「本当です!恋人同士でボートに乗るのって憧れなんです!
父としか乗ったことがないので、後で一緒に乗ってくれますか?」
二色の目がキラッと光った。
謙信「あのような小舟に乗るなど戦を思い出すが、舞の憧れというならば今日叶えてやる」
「戦ですか…?」
謙信「ああ、宵闇に小舟を紛らせて敵に近づく」
「……」
信玄「おいおい謙信。姫の可愛い目がまん丸になってるじゃねぇか。物騒な話はやめておけよ」
現代ではデートの定番が、謙信様の時代では奇襲の定番みたいだ。
時代が違うがゆえのギャップがおかしかった。