第6章 看病四日目 二人の香
「はい。いつもはストレッチの後に筋トレという、筋肉を鍛える運動をするのですが、あの晩はストレッチで終わってしまいました。
前もってストレッチしておくことで体温も上がって、身体が動きやすくなりますし、怪我もしにくくなるんですよ」
わかりやすく言えば……、うーん、と小首を傾げる。
「…準備運動とでも言えばわかりやすいでしょうか」
謙信「ああ、なるほどな。準備運動ならいつでもしているぞ、佐助でな」
「……佐助君も随分大変な生活を送っているようですね」
きっと謙信様の準備運動はストレッチなんていう生易しいものではなさそう。
呆れ半分、でも刀で追いかけ、逃げる二人を想像するとちょっと面白そう。
ずっと寝っぱなしの佐助君の方を見る。
発熱してから4日目だけど、まだ熱は高いままだ。
特効薬があればとっくに熱は下がっているはずなのに…もどかしい。
「早く元気になってくれるといいですね。
佐助君が居ないと謙信様の腕が鈍ってしまいます」
謙信様も佐助君の方を見ながら軽く頷いた。
謙信「ここではすることも限られているからな。越後に帰ったら俺も佐助も鍛え直すことにしよう」
「ふふ、佐助君は病み上がりなのでお手柔らかにお願いしますね。
そういえば私もひとつお聞きしても良いですか?」
謙信「なんだ?」