第90章 現代を楽しもう! ❀謙信様の誕生日編❀
(静かに手早く)
30分程前に冷蔵庫から冷凍庫にうつしてキンキンに冷やしておいた2種類のカクテルを出し、注ぎ口がある器にいれかえる。
冷凍庫から取り出した『例のモノ』を、カウンターに並べたグラスの中にそっと入れていく。
例のモノ……球体の氷には穴があいていて、そこに漏斗(ろうと)を差し込んでカクテルを注いでいく。
それを4回繰り返し、最後にお酒を注いだ穴にレモンピールを差し込んで完成だ。
(よし、完璧!)
「おまたせしました!今夜はこれで乾杯しましょう!」
トレイからグラスをとって、各自に配ると皆が目を瞬かせた。
謙信様と佐助君には透明なカクテルが入ったグラスを、信玄様と私には赤いカクテルが入ったグラスだ。
謙信「舞、これは氷の塊か?」
「はい。と言っても全部氷ではなくて、中は空洞になっていてお酒が入っているんです。
グラスボールカクテルと言って、酒屋さんに注文すると、この氷の器を作ってくれるんです」
佐助「へえ、それはまたおしゃれだね」
佐助君が自分のグラスを揺らし、氷の中でお酒が揺れるのを確かめている。
謙信様は怪訝な顔をしてグラスを揺らしている。
謙信「だが、どうやって酒を飲むのだ。溶けるのを待つのか?」
「いいえ、それは割って飲むんです」
隠しておいた小さな木槌を取り出して、グラスに入っている丸い氷を叩いた。
カシャンと音がしてお酒がグラスを満たすと、薄い氷の器とレモンピールはあっという間にその中に沈んだ。
「器を割ることでカクテルが完成するんです。私と信玄様は甘いカクテルが、謙信様と佐助君には辛口のカクテルが入っています」
木槌が回った順にカクテルが完成していく。部屋には日本酒とは違う趣の香りが広がった。
結鈴「うーん、結鈴、お酒よりオレンジジュースがいい」
龍輝「僕、お茶でいい…」
お酒の匂いを嗅いで渋い顔をする二人を横目に、グラスを持ちあげる。
「では謙信様の誕生日を祝って、かんぱーい!!」
結鈴・龍輝「パパ、おめでとー!!」
ぱーーーーん!
ぱーーーーん!
待ち構えていたように子供達がクラッカーを鳴らしてパーティーは始まった。