第90章 現代を楽しもう! ❀謙信様の誕生日編❀
謙信「そう言うな。少しだけ舞と横になりたい」
「う…」
優しく誘われると危険だとわかっているのに断れない。
謙信様はフッドボード側に綺麗に畳んであった掛け布団を広げ、中へと招く。
ベッドに横になると、さっきまで謙信様が寝ていた名残があった。
「あったかい…気持ちいい。良い匂い…」
謙信「浮かない顔をしていた割に満足そうだな」
「だって…ん」
文句を言おうとした唇をそっと奪われた。
謙信「舞の方が、温かくて良い香りがするぞ?
こうして唇を合わせれば気持ちも…ん…良いと言うものだ」
ちゅっと口づけをされ、謙信様の手が身体を這い回り始めた。
「わわ!?謙信様のエッチ!」
謙信「エッチだろうが何だろうがかまわぬ。お前に触れたい」
「そこはかまってください!あ、もうっ、朝から駄目です!
こうなるから『浮かない顔』をしていたんですよ!」
着ていたセーターの裾を捲られ、慌てて手で押さえる。
「もうすぐご飯を作らなきゃいけないんですから駄目です!」
謙信「少しだけだ」
(絶対少しだけじゃない!)
セーターの裾を死守していると、謙信様の手が後ろに回り、背中側の裾を捲られてしまった。
「あ、駄目です!」
ベッドの中でぬくぬくするはずが、なんでセーターの裾の攻防戦になっているのか…。
謙信「いつもの起床時間まで小一時間もあるだろう?
誕生祝いに少しだけ舞を味わいたい」
「私は食べ物じゃないですっ!あっ」
両手をひとまとめにされて頭の上で固定されてしまった。
なんなく行われた拘束に、さっきまで手加減されていたのだと知る。
眉をひそめて謙信様を見上げると、悔しいくらいにこやかな顔だ。
謙信「ちょっとだけ、だ…」
「…ぁ」
端正な顔立ちが近づいてきて口づけの雨が降ってきた。
巧みに体重をかけられて抵抗できずに受け止めていると『もう、いいや』という気分になってくる。
「も、もう、ほんとに、ちょっとだけですからっ」
虚勢を張っても気持ち良くなりたい気持ちはお見通しのようで、鼻で笑われた。
謙信「ふっ、ではちょっと……だ」
「あ……」
私と謙信様の『ちょっと』には天と地の差があることを身に染みて感じる、とろけるように甘い朝になった。