第89章 最終章 3人一緒
秀兄「じゃあ俺も行くよ。子供二人でなんて、放っておけない。
それに……なんでかな、『舞』っていう女性に凄く興味が湧いた。会ってみたい」
秀兄はあっさりと話を受け入れて付いてくると言った。
信がうんざりしたような顔で息を吐いた。
信「秀兄だって二十歳になったばっかじゃん。それで大人って言うなら詐欺だぞ。ついてこなくていい」
「なんで?私は秀兄も一緒の方が安心するよ?
私達、子供の頃からずっと一緒だったじゃない。
信は頭が良いけど処世術?みたいなの駄目だから、物腰穏やかな秀兄に居てもらった方が絶対いいよ」
信「あのなぁ、俺だってその気になれば普通に話せんの。
お前と家族の前だ、素を見せてんのは」
信がふんと鼻を鳴らす。
そう言われれば確かに信は友達とか知り合いが多い気がするけど、なんというか、頭は良いし、見た目が怖いし、畏敬の念?みたいな眼差しで見られているような……。
秀兄のようなナチュラルな人間関係じゃない気がする。
秀兄「邪魔しないから、な?俺も連れて行って損はないと思うぞ。
しかしお前のご先祖様か……綺麗なオッドアイなのかな。
会えるのが楽しみだ」
垂れ目がちな目が、優しく笑いかけてくる。
少し苦みを帯びた煙草の香りが鼻を掠め、ドキリとした。
「…っ、秀兄…近いよ」
秀兄「おっと、意識してくれるのか、可愛いな?」
信「っ!いちゃついてないでさっさと仕度に入れよ!ったく余計なのが一人増えた!」
漆黒の髪を揺らし、信だけ先に歩いていく。
「あ、待って!!」
秀兄「おいおい、置いてくなよ!俺達は3人一緒、だろ。な?」
「ふふ、うん!」
信は聞こえているだろうに返事をしないで大股で歩いて行く。
秀兄「しーんー!この靴買ったばっかりで気に入ってんだ。
戻って来れないかもしれないなら履いて行ってもいいか?」
信「はっ!?どうでもいいし、そんなの!」
二日後、三人は忽然と姿を消した。
何の変哲もない細道……かつて『本能寺跡』の石碑があった場所で………
了