第89章 最終章 3人一緒
?「舞という女性とお前は遺伝子上、つながっていた。
しかもおかしなことに血液は500年前に預けられていたのに、遺伝子的には約1000年前まで遡るんだ。面白いだろう?」
面白くない。
(不気味過ぎるじゃない、そんなの!)
「いや、ちょっと待って。なんで私の遺伝子とその女の人の遺伝子を比べてみようと思ったの?ていうか、私の遺伝子データを勝手に引き出したわね!?」
私の家系は戦後、ヨーロッパから日本に移住してきたことだけはわかっていた。
でも、具体的に水崎舞という名は残されていなかった……と思う。
そんな昔のこと、はっきりいって興味が無かったから、知らない。
?「ただの思い付きだったんだ。希少物質を体内に宿していた舞っていう女と、すげえ珍しい色素をもつお前をどっか重ね合わせてさ…遺伝子を比較した。
そしたらさ、遺伝子上、お前達はつながっていることがわかったんだよ。悪いと思ったんだけどお前の毛髪を調べたら、出たんだ」
ここまで聞いたら『なにを』と聞かなくてもわかった。
幼馴染は好奇心を露わに、私の手をとった。
さっきまでの素っ気ない態度がなんだったのかと疑うくらい自然に。
?「お前の体内にも希少物質が含まれていた。濃度もほぼ舞っていう女と同等。
まだ人工的には単独採取に成功していない物質だから、お前をワームホール発生の予想地点に連れて行くしかないんだ」
「なんだ、最初から一緒に来いって言ってくれたらいいのに」
?「お前は天邪鬼だから『来い』って言えば来ないだろ?
だからわざと一人で行くように装ったんだ」
「昔から私の事なんでも知ってるみたいに言う、そういうところ嫌い」
勝手に予測され、その通りにしてしまった自分が悔しい。
?「俺はお前のこと……」
低い声が何かを言おうとした時、ふわっと煙草と香水の香りに包まれた。
その大人びた香りだけで誰が来たのか分かった。