第89章 最終章 3人一緒
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そこで記憶が終わっている。その後どうなったのか、結果を聞いていなかった。
「もしかして、タイムスリップするつもり……?」
恐る恐る尋ねると幼馴染は不敵な笑みを浮かべた。
漆黒の髪が頬にかかり、緋色の瞳が自信に満ち溢れている。
?「へぇ、俺との話、覚えてたか」
「だ、駄目だよ。帰ってこれなくなったらどうするの?」
?「万が一に備えて対策も考えてあるから大丈夫だ。
三雲佐助がいた500年前に行きたいが、そう上手く時間指定はできないだろうから、いつどこに降り立つかは不明だ」
幼馴染の頭の良さは知っているから、言葉通り受け止めていいとわかっているけど…
(でも……心配だよ)
「行く!私も連れて行って!」
私がそう言った瞬間、幼馴染の顔になんとも凶悪な笑みが広がって、一歩後ずさった。
(……こんな風に笑う時は決まって嫌なことがおこるんだよね)
?「かかったな。今の言葉必ずだ。出発は明後日」
その言い方にむかっとくる。まるで私がそう言うだろうと予想していたかのようだ。
「結局一人で行くつもりなんかなかったんでしょ。怖かったんじゃないの?」
精いっぱいの文句を言うと、フンと鼻で笑われた。
?「一人で行けるなら行っている。だが、おそらく俺一人では道は開かない」
「どういうこと?」
(私が一緒に行けば開くってこと?)
?「三雲佐助が預けていた水崎舞という人物の血液。
調べた結果、普通の人間の血には含まれていない特殊な物質が含まれていた。
自然界に存在する非常に希少な物質で、電気と水に反応した際に衝撃を受けると強力な磁場を発生させる。デリケートな物質でまだ研究が進んでいない物質だから、その他にも磁場を発生させる要素はあるかもしれない。
まして人体に存在すれば自然界にある状態とはまた違う力を発するかもしれない。
ワームホールは自然現象だけど、その特異体質の人間が居ればより発生確率は高まる。
俺の予想だとワームホールはタイムスリップだけじゃなく、その特殊な磁場が人体に及ぶと、人の記憶に干渉できるはずだ。
未知の要素、未知の現象…すっげぇ、そそられる」
「ふ、ふーん」
説明された内容を必死に頭に入れる。