第89章 最終章 3人一緒
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……時は数年前に遡る。
宇宙物理学にどっぶりはまりこんだという幼馴染の部屋に上がり込んだ時のことだ。
「宇宙物理学ってさ、つまりはなんの学問?」
?「宇宙物理学の中でも、ある分野がすごい気になるんだ。タイムスリップ理論だ」
「………へー」
タイムスリップなんて500年前からフィクション映画や小説で使い古されたネタだ。
現実にそんなのがあるわけない。
?「お前…あからさまに興味無さそうな返事すんなよ。
500年前の日本で、俺と同じ理論を研究していた大学院生が姿を消しているんだ」
「なんでそんな大昔の人間のデータをあんたが知ってるの?」
?「ちょっと調べた。この間、京都の血液保管センターが停電したっていうニュース知ってるか?」
「え?うん」
随分古い施設だったらしく、今時ありえないけどケーブルを使って保管庫に電気を通していたらしい。
何かのきっかけで断線して、保管していた血液が全て解凍されてしまったとニュースで騒いでいたっけ。
管理会社はとっくの昔に事業から撤退していたのに、中に保管していた血液は処分しないままだったとか。
管理は杜撰(ずさん)で、いつ、だれが預けたのか、誰のものか記録がないものもあったとか…。
?「興味が湧いたから血液処理の仕分け作業に加わったんだ。
そしたらさ、その中に『三雲佐助』っていう人が保管依頼した血液があったんだ。日付は約500年前」
「ふーん」
?「タイムスリップ理論を研究していた大学院生の名前だ」
「行方不明の?」