第88章 幸せを願う
(三成目線)
三の姫「なり様、奥州のおじ様から出産祝いにと素敵な着物がたくさん届きました。
子供達の分と、私達の分、時継のもあります」
三成「そうですか」
妻は私のことを『なり様』と呼ぶ。
私もまた、妻に迎えても呼び方は『三の姫様』と敬称をつけたままだ。
妻が愛おしくて仕方がなく、年甲斐もなく可愛がっていたらついには子が4人もできてしまった。
互いの名を優しく呼び合う私達を周囲の者はオシドリ夫婦だと口々に言う。
秀頼「徳生(とくしょう)様、自室にまで本を持ち込まないで下さいと言っているじゃありませんか。
お子様方がひっくり返し、ああぁ!?お待ちくださいっ、それは大事な書物です!」
2歳の次女が徳川家秘蔵の書物を今にも破りそうなのを、時継と名を変えた秀頼様がギリギリのところで阻止している。
私が徳川家にとり立てられる際、九兵衛殿に預けていた秀頼様をお迎えに行きました。
私の付き人として城へあがれば、誰にも怪しまれることなく家康様の元へお連れできると考えたからです。
残念ながら九兵衛殿は亡くなられていて、代わりに九兵衛殿のご子息が秀頼様の面倒を見ていて下さいました。
成長した秀頼様は若かりし頃の秀吉様によく似ています。
九兵衛殿の教えが良かったのでしょう。武士として文武ともに申し分のない技量を身につけておいででした。