第88章 幸せを願う
政宗「海の向こう?俺がよく知っている……誰だ」
一人かと思ったが、文面から察するにどうやら複数のようだ。
顎に手をやって考えるが外国に行った知り合いに心当たりはない。
政宗「ん?」
ふと手紙の縁を飾る絵に目がいった。
ガリオン船や魚、蝦夷を連想させるクマや鮭の絵が描かれている。
それらに混じり、歪(いびつ)な形をした石を背に乗せているキツネの絵があった。
その傍に季節外れの桃が転がっている。
政宗「………」
石の形にふと思い当たるものがあった。
さして政宗は好んで食べないが、過去に一人、それを好物として食べていた人物がいた。
政宗「っ!おいおい、一体どういうことだ?
くっそ、老体の身じゃなきゃ、俺もついてったのに!」
金平糖を好んでいた人物も、狐を思わせるあの男も、桃が好きだったあいつも遺体は見つかっていない。
政宗「生き残っていたのは三成と秀頼だけじゃなかったってことか?」
こんな特大級に面白い秘密が、まさか蝦夷に転がっていようとは。
舞が年をとっていないとなると、三人ももしかしたら若いままなのだろうか。
詳しいことは話せないと書かれた舞の文面をもう一度見る。
政宗「ったく、お前の文はいつも謎を残していくな。
達者でな舞。信長様、光秀、蘭丸……」
愉快な気持ちで一人、笑いをこぼした。