第88章 幸せを願う
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(政宗目線)
政宗「文だと?」
依頼していた着物を受け取ってひと月もしないうちに、蝦夷の行商人から文を受け取った。
差出人の名前は書かれていない。
行商人「はい。この間私が蝦夷を経って幾日もしないうちに舞様がこの文を持って私を訪ねてきたそうです。
その頃私はこちらにおりましたので、代わりに知り合いが文を預かったそうです」
依頼した着物以外にも縫い上げてくれた舞に礼を書こうと思っていた矢先だった。
身体の調子が良くないので家康、三成の家族、時継には使いを出して届けさせた。
今頃届いて驚いている頃だろう。
舞の想いが伝わるような素晴らしい着物ばかりだった。
政宗「……」
文を開くと、文面を囲むように子供が喜びそうな絵が小さく描かれていた。
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『政宗、突然ですが私はこの地を離れることになりました。
この間縫い上げた着物の感想をきかないうちに旅立つのは後ろ髪を引かれる思いですが、何分時間がなくて…。
もしお直しが必要なら、お城の針子にお願いしてください。
本当にごめんなさい。
政宗から送ってもらった反物、大事にするね。
たくさん送ってくれてありがとう。
海の向こうで私の針子の腕を認めて、待ってくれている方がいるんです。
政宗がよく知っている人だよ。
詳しい事情は話せないの、ごめんなさい。
でも私も海の向こうに居る人達も、精いっぱい生きるから。
政宗も家康も徳生君も、時継様も…皆、身体を大事に生きてください』
急いで書いたとわかる字の乱れが、そこかしこに見て取れた。