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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第88章 幸せを願う


お客様が持ってきた着物をあの男性にあてはめていく。


白い着物、黒い外套……下はきっと……薄い青の袴。


そこまでは思い出せたのに、それ以上のことは思い出せなかった。


けれど出会えたことと、あの方が幸せそうに笑っていたことだけが何よりも嬉しかった。


バックヤードでよくわからないまま泣いていると同僚が心配してくれた。


同僚「大丈夫?もしかして情緒不安定になってる?
 もうすぐ唯世(いせ)は結婚するんだもんね」


マリッジブルーだと思われているみたいだ。
全然違うけど、この原因のわからない涙の言い訳には理由が必要だ。


唯世「うん、そうかも…?さっきのご夫婦があまりにも幸せそうで、なんだか泣けてきちゃった」

同僚「そっか、唯世の旦那さんもきっと幸せにしてくれるよ。
 すっごい優しいじゃん!よそのご夫婦を見て涙してないで、新婚生活を楽しみにしなよ」

唯世「ふふ、ありがとう」


お客様の名前は舞様で、旦那様は謙信様。


とてもお似合いの二人で、お互いを深く想いあっているのが一目でわかった。


素敵な二人だった。


(私も目一杯、幸せにならなきゃ。あのお二人のように)


私は人知れず胸に誓い、店を後にした二人がいつまでもそうであるようにと願った。



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