第88章 幸せを願う
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後日完成した商品を嗅いでもらうとお客様はとても喜んでくれて、サンプルを入れた小瓶の色も気に入ってくれた。
「凄いです。一度お香の香りを嗅いだだけで、こんなに素敵な香りを作れるなんて。この瓶も可愛いですね」
大小の瓶を出し値段を説明して、瓶の大きさを決めた。
後日取りに来るというので用意して待っていたのだけれど……
同僚「ねえ!!!!見てみて!めっちゃくちゃ格好いいお客さんが入ってきたよ!」
大興奮した同僚に肘でつつかれた。そこには……
(え……………?)
アロマオイルを依頼されたお客様に腕を貸して立っている男性。
色白で褪せた金髪…形の良い唇に、左右色違いの目………
一瞬ひどい眩暈を感じて、慌ててバックヤードに引っ込んだ。
(なに…?あの人……どこかで…)
断片的に見えた人と同じだった。
少女漫画みたいな出来事だ。
同僚「ねえ、あなたの担当しているお客様みたいだけど具合が悪いなら代わろうか?」
同僚が心配して声をかけてくれた頃には気分も落ち着いていた。
(あの人が誰であろうと関係ないじゃない。仕事に集中!)
まず最初にお客様自身のオイルを渡して、その後にご主人の香りを渡した。
傍(はた)から見ていてもお二人はとても仲が良い。
時折顔を赤くしながら言い合っている。
気付かれないようそっとご主人の顔を見た。
恐ろしいほど整った顔立ちに、アシンメトリーの髪型が良く似合っている。
涼し気な雰囲気を持っているけれど、きっと内には熱い感情を持っていそうな……
惹きこまれそうになってハッとした。
(いけないいけない、この方の顔を不躾に見るなんて…)
(え……?)
自分で自分の思考に愕然とした。