第87章 この命、尽きるまで
龍輝「俺さ、あっちに行ったら、いっぱい勉強して信長様の部下になりたい」
「え……?」
突拍子もないことを言われ、目線を遠くから龍輝にやった。
龍輝「だって蝦夷に来た時、信長様は俺と母さんを守ってくれたから、お礼がしたいんだ。
信長様みたいに強くて、格好良い人になりたい」
強くて格好良い人ならここにたくさんいるけど、と思いながら龍輝の想いを尊重してあげる。
「そっか。信長様は厳しいし本当に怖いよ。でもそれだけじゃない、凄い人なの。
龍輝がそうしたいと思うなら頑張ればいいよ。ママは応援するよ」
龍輝「…うん」
会ったことがない頃から龍輝は信長様が好きだった。
実際会って憧れがやまないのなら、その想いは止めてもきかないくらい強いだろう。
だったら好きなようにやらせてみよう。
相手が信長様ならきっと良くも悪くも見極めてくださるはず。
「………」
成長すればするほど謙信様に似てきた龍輝の頭を撫でた。
身長は私を追い越し、まだまだ伸びそうだ。
褪せた金髪が潮風に吹き乱れ、輝きを放っている。
「ちゃんと見ているから、ね」
切れ長で、左右色違いの目がキラキラと希望で輝いている。
夢を叶えたいと胸がいっぱいみたいだ。
「ふふ、ママも寂しがってないであっちで頑張らなきゃ」
龍輝「母さんはあっちでデザイナーになるんだよね?カッコイイ服、俺に作ってよ」
「もちろん!」
結鈴「何話してるの?」
結鈴が甲板をたたっと走ってきた。